英語・フランス語・ポルトガル語な日々………そしてドイツ語が加わる

時に必要にせまられ、時に興味からいくつか言語を勉強しています。

フランス語・否定文のからくり

フランス語の否定文の作り方は、

動詞を ne ..... pas で挟む、

ですね。

 

          No!と言う犬

 

でも、ずっと以前からそうだったのかちょっと分からないけれども、最近は会話の中ではことごとく "ne" を削ります。

Je ne sais pas.

と言う代わりに

Je sais pas.

 

Je ne l'ai pas vu.

と言わずに、

Je l'ai pas vu.

 

そもそも "ne" は非常に音として弱いので、会話で特に早く話そうとすると、勢い飛んでしまう音であることは良く分かります。

 

しかし、フランス語の否定においてはこの小さい "ne" こそが本来否定の意味を担っているのです。

"ne" を使ったフランス語の否定の表現をざっと挙げると、

ne - pas

ne - rien

ne - jamais

ne - que

ne - plus

ne - point

ne - guerre

ne - personne

 

pas, rien, jamais.....などこれらの単語自体には全く否定の意味はありません。

 

この "ne" 抜きの否定文に慣れてしまうとそれとは反対の文 "ne" だけの否定文に逆に戸惑ってしまうことが起こります。

  • Je ne sais pas quoi faire.
  • Je sais pas quoi faire.
  • Je ne sais quoi faire.

上の3文は全て同じ意味です。ただし2つ目は非常に口語的、文法的には決して正しいとは言えない文。3つ目の "ne" だけの否定文は今では多分に文学的な趣で捉えられてしまうかもしれない言い回しです。

 

この文はどうでしょうか?

je ne sais que faire.

この文は ne - que で挟まれた「~しかない」の文ではありません

je ne sais でまず「私は分からない」、que faire は「何かをする」

je ne sais que faire =  何をすればいいのか(すべきなのか)分からない

という意味です。

 

 虚辞の "ne"

などと言うと大層なもののように思えるけれども、例えば avant que ~ の文の中によく現れます。

Il faut partir avant qu'il ne pleuve. (雨が降り出す前にでかけなきゃ)

この "ne" です。

この "ne" はあってもなくても構いません。だからこそわざわざ虚辞の"ne" なんて名前が付いているのですが、日本語でも

「雨が降り出さない前に出かけなきゃ、」

とか言いますよね。それと同じです。

 

他にも例えば、

Je crains qu'il n'arrive trop tôt. (彼が早く着きすぎないか心配だ)

なんてのもあります。

これも "ne" があってもなくても同じです。