英語・フランス語・ポルトガル語な日々………そしてドイツ語が加わる

時に必要にせまられ、時に興味からいくつか言語を勉強しています。

フランス語・自動詞と他動詞。これが結構難しい…

普段、日本語を話すときに、これが自動詞、これが他動詞、などと当然考えないで、そしてちゃんとそれを使い分けているのだけれど(母国語とはそういうものですね)、外国語を学ぶ段になると、この違いをちゃんと理解して動詞を正しく使うことが意外に難しい、と思うことがあります。

 

多分、他動詞・自動詞を論じだすとそれだけで本が一冊書けてしまえるほど、重要な主題なのかもしれないけれど(フランス語と日本語の間でも恐らく他動詞・自動詞の定義が変わるのではないでしょうか)、ここではフランス語において、

他動詞 (transitif) は直接目的語をとるもの、

自動詞 (intransitif) はそれ以外、

という、非常に大雑把な定義の元に話を進めてき行きたいと思います。

 

日本語で例を出すと、

私は子供たちを起こす。→ 私は起こす。何を? 子供たちを。

ここでの「子供たちを」が直接目的語で、よって「起こす」は他動詞。

私は朝7時に起きる。→ 動詞の主体はそのまま主語「私」、目的語は無し。

よって「起きる」は自動詞。

となります。

 

フランス語で自動詞、他動詞を見分けるカギは前置詞。

前置詞を必要とする動詞は自動詞、前置詞を介さずに目的語を直接とる(=直接目的語)動詞が他動詞です。

 

例えば動詞「parler」は自動詞。

~に話す(英語の to tell, to speak)という意味のこの動詞は必ず前置詞 - à が 話しかける対象の前に来ます。

Je parle à ma mère. (母親に話しかける)

Il est en train de parler à son supérieur. (彼は上司と話している最中だ)

よって、これらを代名詞で受けると、

Je lui (à ma mère) parle.

Il est en train de lui (à son supérieur) parler.

となります。

 

更に話を進めて、parler の再帰動詞形 se parler。

Ils se parlent.(彼らは話し合っている)の se は彼ら自身を意味し、これを無理やり書き換えると

Ils parlent à eux-même. つまり上の文の se は à eux-même を表すので(直接目的語ではない)、これを過去形にしたとき、

Ils se sont parlé.

と過去分詞は変化しません。

再帰動詞の過去形で過去分詞が性数一致をするかどうかは、ひとえに me, te, se などの再帰代名詞が直接目的語かそうでないのか、この違いに依ります。

 

 この場合は、parler à~ と日本語の「~に話す」が対応しているので分かりやすいけれど、日本語での他動詞がフランス語でも他動詞、日本語での自動詞がフランス語でも必ず自動詞とは限りません。

 

例えば「お礼を言う」(英語の to thank)に相当するフランス語の動詞は remercier。

日本語で考えると、~にお礼を言う、~に感謝する、となるからついつい à が付くような気がするけれど、remercier は他動詞。感謝する対象が前置詞を介さずに動詞の後に置かれます。

je remercie ma mère.(母に感謝する)

Il a remercié son supérieur.(彼は上司に感謝した)

 

したがって、これを代名詞を使って書き換えると、

Je la remercie. (Je lui remercieにはならない)

Il l'a remercié. (Il lui a remerciéにはならない)

もし、感謝した上司が女性なら、

Il l'a remerciée.

となります。

 

逆の例では、動詞 pardonner (英語の to forgive)。

日本語で考えると、誰々を許す、なので直接目的語がくるような気がするけれど、フランス語では、pardonner à quelq'un と許す対象の前に à が入るのです。

Le père a pardonné à son fils.

したがって、これを代名詞を使って書くと、

Le père lui a pardonné. (Le père l'a pardonné にはならない)

となります。

 

代名詞がどの形になるかも、他動詞、自動詞の概念と密接に関わっています。

どれが自動詞でどれが他動詞かは逐一辞書で確認するしかないです。

 

 この動詞は自動詞、それとも他動詞?

最近、フランス語で本来自動詞のはずが他動詞のように使われていることが多々見受けられるようになった動詞があります。

いい加減なことを言ってはいけないので Académie franćaise でちゃんと確認しました。

 

débuter

歌手デビューなどと日本語でも言うから意味は分かるけれども、この動詞は自動詞。

つまり「何かが始まる」のであって「何かを始める」ではないのです。

Ma carrière débute. が正しく、

Je débute ma carrière.  とは言いません。

 

よく考えると、日本語でも同じですね。

松田聖子は1980年にデビューした。

Seiko Matsuda a débuté en 1980.

 

 

démarrer

何かが動き出す、始動する、稼働する、(エンジンが)かかる、という自動詞。

Ma voiture démarre. であり、

Je démarre la voiture. とは言いません。

 

日本語で考えるとよく分かると思います。日本語では、

「機械が稼働する」と言い、

「(私が)機械を稼働させる」と言います。

「エンジンがかかる」と言い、

「(私が)エンジンをかける」と言います。

フランス語でも同じです。

La machine démarre. と言い、

私が機械を稼働させるときは、日本語と同じように使役動詞を使って、

Je fais démarrer la machine.

となります。

 

車のエンジンをかける時はどう言うか?

Je fais démarrer la voiture. と言います。